創世を歌いし少女…

ついに、地上に大陸を戻せる日がやってきた。
9人の少女と1人の少年によって、作り上げられる世界はどのようなものだろうか・・・?

***

中央宮へ入り、約束の地に上った5人。
だが、マグナ・カルタを歌える者はまだ分からなかった。
「この音譜の中身を読める御子って、誰なの?」
もちろん、誰にも分からなかった。
「理子様。それ、見せてください」
涼歌がやってみると言い出した。
「これを?」
「はい。その音譜から不思議なものを感じますから・・・」
「・・・分かったわ」
そう言って、理子は涼歌にマグナ・カルタを渡した。
「涼歌、読めるのか?」
米斗が心配そうな顔になった。
だが、彼女は平気な顔をしていた。
「大丈夫だよ。 ・・・なんか、引き込まれる感じがする・・・」
そう言うと彼女は、詩を読んだ。
「選ばれし我らの神に、罪人裁きし神に・・・」
「ちょ、ちょっと・・・!?」
「マグナ・カルタって神様の詩なの?」
「違うわよ!」
だが、涼歌は歌詞を読み続けた。
「歌詞を読まれるだけでも、響く詩があるだなんて・・・」
「うぅ、なんか、聴けば聴くほど頭が痛くなってきた・・・」
「朱禰様、わたしもです・・・」
「涼歌! 早くやめるんだ!」
米斗の声にも反応しなかった。
「・・・反応なしか・・・」
詩が後半に入り始めた頃に異変が起きた。
「うっ・・・。なんか、何もかもスッキリするような・・・」
「理子様、わたしもだよ・・・」
「朱禰様、お気を確かに・・・あれ?」
次々と、3人がその場に倒れていった。
米斗は理子達の状態を確かめた。
意識が無かった。むしろ、魂が抜き取られたような感じだった。
だが、米斗にはそんな経験が当然無かったが、そう例えるしかなかった。
「涼歌! いい加減にしろ!」
米斗も意識が無くなりそうになる中、詩を歌っている涼歌の所へ向かった。
「やめろ!!」
もはや、涼歌には意思が無いように見えた。
「愚かな人間よ。我らが世界に踏み込みし人間よ・・・」
「!?」
それは、涼歌が話しているように聞こえた。
それがどういうことかを考えているうちに、本当の涼歌の声がこう言った。
「米斗。一緒にいこ?」
「え・・・っ?」
そして、米斗は涼歌と共に意識を失った・・・。

***

瑞穂の魂を連れ戻すために、月詠みの丘へ向かっている楓葉と紀実。
そこに着くと、すぐに楓葉はこう言い出した。
「今すぐにでも助け出したい。でも、上は本当に大丈夫なのだろうか?」
そして、紀実はこう答えた。
「大丈夫よ。優花ちゃんはちゃんと考えた上で、わたしたちにタイミングをゆだねたのだから・・・」
「そうでしょうけど、もし失敗したら・・・」
「失敗はあまり考えない方がいいわよ。だって、失敗することばかり考えていたら、成功なんて絶対にないのだから・・・」
「はい・・・」
結局楓葉は、すぐに歌うことにした。
「楓葉!」
「あ、はい」
「もし、無理だったら、諦めなさいよ?」
「分かりました・・・」
楓葉は持ってきたカウントストップを見つめた。
詩が読めたには読めた。
「・・・何、これ?」
「どうしたの?」
楓葉は瑞穂が歌った歌詞までも読めた。
「楓葉?」
「す、すみません。見とれてました・・・」
どうやら、楓葉が歌うのは瑞穂には読めたのかどうかは分からなかったが、2番から歌うらしい。
「この音譜の詩、特別なものなんですね・・・」
「そうみたいね・・・。スイッチでいえば、通常の、1番目から歌いだすのがONね。そして、今はOFFにしなければならないから、2番から歌いだすってことじゃないのかな?」
「そう・・・なのでしょうか? 一応やってみます」
そう言って、楓葉は2番から歌った。
すると、楓葉を光が包み込んだ。
「楓葉!?」
紀実が慌てた。
だが、楓葉はこう言った。
「大丈夫です。あ、瑞穂だ・・・」
楓葉は包まれた光と共に何かに引き込まれるかのように消えていった。
「楓葉!?」
さらに慌てる紀実。
「ちょっと、大丈夫なのかな、これ・・・」
消えていったはずの楓葉からの声が、紀実の頭に響いたような気がした。
「行ってきます。どうやら、上が危ないそうなので・・・」
それを聞いたようなした紀実だったが、何もできない自分に腹が立っていた。
「どうして、どうしてなの! もう、何もできないのなんて嫌なのに・・・。助けられない、何も・・・」
すると、空から楓葉が降ってきた。
それをすかさず、紀実は受け止めた。
「楓葉!?」
楓葉は動かなかった。それに少し冷たい気もした。
「魂が抜けた感じってところかな?」
当然、紀実にはそんな経験はない。
「・・・どうしようかな・・・」
紀実はどうしようかと考えていた。
しかし、何も思いつくわけもなく、紀実と瑞穂を同時に抱えることはできなかったが、近くに偶然あったリヤカーに乗せて八条宮へと向かっていった・・・。

***

何日経ったのだろうか・・・?
紀実はずっと楓葉と瑞穂のそばにいた。
「・・・早く行かないと、他のみんなが心配するだろうな・・・」
だが、彼女は誰も来ないことに気が付いた。
「どうしたんだろう、みんな・・・?」
彼女が心配していると、瑞穂の体が動いたような気がした。
「瑞穂ちゃん!?」
「ん、うーん・・・」
瑞穂が目を覚ました。
「ここ・・・、わたしの家?」
「ええ、そうよ」
「そっか・・・」
そして、楓葉も目を覚ました。
「楓葉!」
「ご迷惑をおかけしました・・・」
「もう、楓葉ったら・・・」
「あ、はい・・・。すみませんでした・・・」

しばらくして、瑞穂と楓葉があることを言い出した。
「りこさまたちが、突然やってきたから驚いちゃった」
紀実にとっては訳の分からないことだった。
「わたしたちは塔のシステムの中にいました・・・」
楓葉がこう切り出した。
「わたしは瑞穂を助けようとしたのですが・・・」
「わたしは声が聞こえたままにやろうとしたら、楓葉に止められたし・・・」
「だって、あのままやっていたら、瑞穂が・・・、瑞穂が消えちゃうんだよ・・・」
「えっと・・・」
紀実は楓葉が瑞穂を止めに行ったことは理解できた。
「つまりは、楓葉が瑞穂を助けたら、理子たちがやってきて・・・」
「そうなんですよ!」
「りこさまたちを何とか送り返すことができたからよかったけどね・・・」
「送り返す?」
紀実はそのことが気になった。
「うん。・・・それでね、今は一条宮にいると思うから、そこに行こうってことになって・・・」
「分かったわ。それでは、一条宮に行きましょうか」
「はい!」
「早く行こうよ!」
そして、3人は一条宮へと向かった。

***

「来たわね、紀実・・・」
入り口で理子が出迎えてくれていた。
「理子、無事だったんだね?」
「ま、まぁ・・・ね」
「話は瑞穂と楓葉から聞かせてもらったわ」
「そう・・・。なら、話は早いわね」
そう言って、理子は他のみんながいるところへ案内した。
「紀実様!」
「わたし、何日もみんなの心配ばかりしていたのに、何もできなかった・・・」
「紀実・・・」
「わたしは、みんなが困っていない時にできることがあるのに、その逆の時になると何もないんだ・・・」
紀実は、今の彼女たちを見ると、あの時の悔しさを再び思い出してしまった。
だが、理子にとっては紀実には何度も助けられている存在だ。
「いいえ、紀実・・・」
「え?」
「紀実はちゃんと役目を果たしていたわ」
「何をやったって言うのよ?」
理子はこう答えた。
「それは、あなたが一番分かっているはずよ?」
「そんなわけ・・・」
「まず、考える。それが、あなたがよくすることよ?」
そう理子に言われた紀実は考えてみた。
「わたしはただ、瑞穂ちゃんと楓葉のそばにいただけ・・・」
「そう。2人を見守ってくれていたじゃない?」
「わたしは、そんなことを・・・」
「そんなこと? 紀実って、どんな小さなことでもそれで済ましていたっけ?」
そして、理子はこう言った。
「わたしは、どんなに小さなことにだって、嫌になることはないよ。だって、わたしはそれでずっと助けてもらったんだから・・・」
「理子・・・」
「紀実、あなたが自分の支えにしていたことなんじゃないの?」
紀実は、理子に助けられた。本当は自分が助けなければならないのに、いつか前のことを思い出していた。
「・・・そうね、間違っていたわ・・・。それで、わたしはどんなことにだってどんな人でも助けてきたんだから!」
「そうよ! それでこそ、紀実だわ!」
「ごめんなさい。ウジウジしていたわたしが悪かったわ」
話がとても反れてしまったが、理子が一条宮に紀実を来させるようにした理由があった。
「これからのことについて、話しておきたいの・・・」
「どうしたの、急に?」
「実は・・・」
理子は、自分たちがいなかった数日の間に、様々な出来事が起きたことを知らせた。
「ここ数日の間に、ベアルトリスが何者かの襲撃にあっているそうなの・・・」
「え?」
「3人がここまでに向かう時に見てもらったとおり、街の大部分が破壊されているのは分かったかしら?」
「え、ええ・・・、そういえば・・・」
確かに、外は様々な部分が壊れていた。
「しかも、町の人によれば、空から攻撃されているっていうらしいわ・・・」
「空?」
「ええ、空よ・・・」
空からというのは、どうやら空に大陸ができているらしい。
もし、これがマグナ・カルタによって紡ぎだされたものならば・・・。
だが、マグナ・カルタは地上に大地を取り戻すのではなかったのか?
「空に大地が・・・」
紀実は急いで外に出た。
「あ、紀実!」
理子たちも後を追った。

***

紀実は、外に出て空を見上げた。
すると、本当に空に大陸のようなものがあった。
「本当に、ある・・・」
彼女が外に飛び出していったのを追ってきた理子たちが追いついてきた。
彼女たちも共に空を見上げてみた。
「信じられないわね・・・」
そう理子が言った。
「大陸が攻撃してくるのなら、大陸ではなく、古代文明で言う『要塞』なのではないでしょうか?」
楓葉がそう言った。
それに対して、紀実はこう言った。
「要塞、か・・・。とにかく、止めに行けたらいいのに・・・」
「待って。まだよく分かっていないのに、飛び込んでいったら危険だわ」
「そうだけどね・・・」
紀実は、この世界の人々を助けたい気持ちが強かった。
「本当に要塞でしたら危険ですよ、紀実様」
楓葉も止めようとした。
だが、紀実の意見を認めようとする人が現れた。
「あの大陸が、一つの意志によって作られたものならば、止めねばならぬな・・・」
「お父様!?」
「理子よ。お前はあれに怯えているのか?」
「そ、それは・・・」
真之介は一条家の誇りを、理子に突きつけた。
「一条家の当主になったお前こそだ。『一条家は、万物に恐れることならず!』だ・・・。分かったか?」
「・・・しかと賜りました・・・」
こうして、大陸に向かうことになったのだが、様々なことがまだ残されていた。
「紀実、瑞穂、楓葉、言い忘れたことがあったわ」
「な、何なの?」
「ついて来て。そうすれば、分かるから・・・」
理子は、紀実、瑞穂、楓葉の3人を一条宮のある場所に連れて行った。
その際に、彼女は残った4人にこう言った。
「朱禰と瑠梨は下の大陸の守備に就いてもらいます。優花と科鈴は、えっと・・・」
さすがに、優花と科鈴のことをよく分かっていなかった彼女には、何も思いつかなかった。
「誰がどう言おうとも、あたしは大陸に行くからね!」
「優花!? 危険なのは分かってるの?」
「何言ってるのよ? こんなこと、一生に一度すらないんだから・・・」
「優花ってば・・・。分かりました。わたしもお供させてもらいます。それなりにお役に立つと思いますので・・・」
こうして、優花と科鈴は理子たちと大陸へ向かうために、待機していることにした。
「ばいばい、理子様!」
「皆様のご無事をお祈りしています」
そして、朱禰と瑠梨はひとまず、二条宮のあるアルフィンへ戻ることにした。
「酷な仕事かもしれないけど、頑張ってね、朱禰、瑠梨・・・」
理子はこう思いながら、紀実たち3人を連れて行った。

***

どうやら、一番奥のようだ。
「ここって、まさか?」
たくさんの棺桶があり、どうやら代々一条家の当主である名前らしきものが書かれたものが壁に掛けられていた。
「そう・・・、ここは、一条家の当主が眠る墓の間の入り口。まぁ、言っちゃえば、ただ単にお墓があるだけなんだけど・・・」
そう言って、理子は墓の間の床を足でドンドンと叩いた。
「な、何をしているのよ!?」
急にやり始めたので、紀実は驚いた。
「・・・ここか・・・」
そう言って、紀実の質問を無視した理子は、床をめくり上げた。
めくり上げられた床の下には、階段があった。どうやら、地下に続いているらしい。
ここでようやく、彼女は紀実の言っていることに気が付いた。
「この下が肝心なのよ」
そう言って、彼女は階段を下った。
「この下に、一体何が・・?」
ここで、瑞穂があることに気づいた。
「そういえば、米斗と涼歌さまがいないよね?」
「あ、そうだった。確かにそうだったわね・・・」
言われてみれば、確かにそうだ。
紀実もそう思った。
そのことを踏まえて、紀実たちは階段を下った。

***

階段を下ると、とても寒く感じた。
階段を下りてきた3人を確認した理子はこう切り出した。
「既に分かっていると思うけど、わたしが言いたいことは何だと思う?」
瑞穂が言った。
「そういえば、米斗と涼歌さまが他のみんなと一緒じゃなかったね?」
その通りだと言わんばかりに、理子は話を先に進めた。
「そうね。この先に行って見てもらえれば分かると思うけど、涼歌と米斗が死んだように冷たくなっていたのよ・・・」
「それって、いつから?」
「分からないけど、多分、涼歌がマグナ・カルタを歌い終わってからだと思う。でも、あなたたち以外はマグナ・カルタによって魂を抜かれたような感じになったのは確かな話よ」
「そうか・・・」
いつ、2人が今のようになったのかは実際の時間までは誰にも分からなかったが、推測ぐらいは誰にもできた。
「米斗君、涼歌ちゃん・・・」
そして、紀実は米斗と涼歌を見に行った。
死んでいるようになっているといえども、理子たちのように、魂だけが抜けているという推測の元、普通に寝かされていた。
「なぜかは分からないけど、2人はわたしたちが見た夢のようなものには一切出てこなかった・・・」
ふと、理子がそんなことを言った。
ちなみに、紀実以外は意識がどこかへ飛んでいる間に理子と同じ夢のようなものを見ていたという。
「夢といえば夢だけど、あそこは塔のシステムの内部だよ」
「わたしと瑞穂でなんとか、理子様たちがどこかへ行くのを止められたのですが、米斗や涼歌様を感じることができませんでした」
瑞穂と楓葉によれば、どうやら2人は塔のシステム内部を通っていないか、既に通ってどこかに行ってしまったかのどちらかだという。
「米斗君と涼歌ちゃんがいなかった、と・・・」
「はい・・・」
このことと空にある大陸とを、紀実は結びつけてみた。
「大陸と2人の関係・・・」
紀実はやはり、大陸へ行かなければ何も解決しないという結論に達した。
「理子。わたしはやっぱり、あの大陸に行くよ!」
止めても聞かない紀実と、一条家の信念とで、理子は自分も同行することにした。
「分かったわ・・・。でも、わたしの指示に従ってもらってもいいかしら?」
「ええ、構いませんよ。これは命令であり、ミッションでもあるのでしょう?」
「そう。分かってもらえればいいわよ」
理子は『剣』である、瑞穂と楓葉も加えさせた。
「よぉし! 久々にりこさまをお守りできるから、はりきっちゃうよっ!」
「瑞穂、ちょっと調子に乗りすぎよ」
「・・・そう?」
「そうよ」
理子たちは早速、大陸へ向かうための準備をした。

***

玄関先で待っていた優花と科鈴に、大陸に行くことを伝えた。
優花が言った。
「1,2,・・・,6人ね・・・」
「大陸へ行くにはまず空よね・・・」
「空、ねぇ・・・」
優花は少し考え込んだ。
そして、結論が出た。
「ドラゴンフライを改造しちゃってもいい?」
瑞穂の母親が昔に愛用していた飛行機を改造すると言い出した。
瑞穂は、大切なものがなくなるのが嫌だったのでダメと言った。
「やだやだ! 絶対にやらせないよっ!」
すると、優花が怒った。
「別にいいじゃない、もっとすごいのになるのに・・・」
「絶対に嫌だからね、本当に!」
「分かったわ。やらないからさ・・・」
そう言われた瑞穂はほっとした。
楓葉はドラゴンフライに対する瑞穂の愛着を感じた。
3回ぐらい動かしただけだというのに、と不思議に思った。
「瑞穂・・・。どうして、そこまでに嫌がるの?」
瑞穂はこう言い返した。
「お母さんの大切なものがなくなるのが嫌だから・・・」
「そうなの・・・。でも、いずれはなくなっちゃうんだよ・・・?」
「・・・」
それでも、瑞穂は譲れなかった。
そこに、話を聞いていたかのように、一人の女性が現れた。
「お母さんの飛行機が、普通のじゃないぐらい分かっているわよ?」
「えっ?」
瑞穂の母親である、莉々子だった。
「あ、あの・・・」
「瑞穂、楓葉さん。ドラゴンフライを格納庫に持ってきてくれないかしら?」
「あ、はい。でも・・・」
「とにかく、ドラゴンフライを持ってきなさい、分かった?」
瑞穂と楓葉は莉々子の言われるがままに、ドラゴンフライを8番エリアにある格納庫へと持っていくことになった。
莉々子と他の4人は、莉々子の後についていき、ベアトリスへと向かって行った。

***

全員が8番エリアに着いた時・・・。
ドラゴンフライに持ってきた瑞穂がこう言った。
「この飛行機、どうなっちゃうの?」
莉々子はこう答えた。
「改造、しちゃってもいいよ」
「え、ええっ!?」
瑞穂はきょとんとした。
「大丈夫よ。元々これは改造されたものだし、拡張だってできるのよ」
「え?」
莉々子は隅々に置かれていたパーツを、ドラゴンフライの近くに寄せ集めた。
「こ、これが?」
どこにどう使うのかが分からない物ばかりだった。
「これでドラゴンフライを改良できるのね!」
優花は大喜びだった。
「これは元々、古代文明の遺産を現代で使えるようにした物なのよ。ここのネジを外してっと・・・」
そう言って、莉々子は翼の接続部のネジを外し始めた。
4つの接続部のネジを外すと、彼女はこう言った。
「誰か、翼を壊さないように外してみて?」
そう言われて翼を外した、瑞穂、楓葉、優花、理子。
「あら、本当に翼だけが外れるのね・・・」
翼を外した後、莉々子はこう言った。
「さてと、次はプロペラね。誰か、後ろにつける方法は分かるかしら?」
そう煽ってみる莉々子。
その期待に答えようとする優花。
「プロペラをこうしてっと・・・」
優花は余裕で、プロペラを外した。
そして、他の人が誰もやっていないのに気が付いた。
「あんたたち、何やっていたのよ?」
「そういわれても・・・、わたしたちは何も言われてないわよ?」
「気が利かないわね・・・」
そう言って、優花は指図をした。
パーツを持って来させたり、パーツを外させたり・・・と。
そして、無事にプロペラを後部につけることができた。
「すごいわね・・・」
莉々子は初めてだというのに、すごい手つきでこなした優花に驚いていた。
そして、理子たちにパーツの事を教えて、後を任せていった。
「・・・というわけで、好きな通りに組み立てちゃって構わないからね」
「ありがとうございます、莉々子様」
そう言われた莉々子はにっこりと笑って去って行った。
「・・・さてと、ドラゴンフライを改造しますか・・・」
そう言って、優花はどんどんパーツを組み立てていった。
「乗れても4人・・・? 気に食わないわね・・・」
「優花がやめちゃえばいいじゃん」
「あ、あたしが? やめるわけないじゃない」
「ぷぅ・・・」
もめているうちに、ドラゴンフライはどんどん姿を変えていく・・・。
2時間後。ドラゴンフライは新たな姿へと変わった。
「エンジンが2人乗り用だったから、6人乗りができるように強化してみた。でも、結構重いわね、機体が・・・」
「元々6人乗りで重いんだよ、優花?」
「分かっているんだけど、プロペラは前にするか・・・」
パーツとエンジンがそれぞれ独立しているのが不思議であるのだが、古代文明はそこが不思議であることがすばらしいといわれているのだ。
優花は後ろに付いていたプロペラを前に付け直した。
「・・・よし、1つの場所に2人乗って・・・」
優花の判断によって完成したドラゴンフライは、翼の付け方がトンボのようになったのが主だった所であり、座席の数を増やしただけというシンプルなものになった。
逆にエンジンが重くなったが、空を以前よりも高く飛べるようになった。
「適当だけど、エンジンは大陸のある高度まで飛べるようにはしてみたわ」
「ええ。それでないと、困るわよ」
こうして、新しく生まれ変わったドラゴンフライは、大陸に向けて飛ぶことになった。
操縦は自分で得意だと言った瑞穂に任せることにした。
一応、操縦席の隣の補助席には楓葉が座ることになった。
「暴走しないでよね、瑞穂?」
「うん、じょぶじょぶ!」
そして、瑞穂は張り切って、ドラゴンフライを大陸に飛ばしたのであった。

***

何事もなく、大陸にたどり着くことができた。
「ここが・・・、大陸!?」
大陸は普通の大陸のように感じた。
しかし、急に現れたものに何があるのかが分からない。
「注意深く行きましょうね・・・」
そう、楓葉が注意をうながした。

少し歩くと、人がいた。
どうやら、何かを探しているようで、辺りを動き回っていた。
「何をしている!?」
理子はそれに向かっていった。
「貴様らこそ、何をしているのだ?」
「・・・!」
なんと、クーデターの時に逃げ切った総統だった。
「ファイゼン総統!?」
彼は、驚いた理子を見てこう言った。
「久しぶりだな・・・」
「は、はい!」
「いきなりで悪いのだが・・・」
彼はそう言って、こう続けた。
「この大陸は私に任せて、お前たちはベアルトリスを守れ! いいな?」
その忠告は、理子たちにとっては受け入れられないものだった。
「申し訳ありませんが、たとえ相手が総統であっても、引き返すことはいたしません!」
「そうだよ! 総統の言うことを聞くぐらいなら、ここに来ないし」
「ファイゼン総統。あなた様は、クーデターの時には何もせずに人任せだったようですわね?」
6人の御子たちの砲火が始まった。
そして、彼はこう言い訳をした。
「なっ!? 俺様がいなかったら、この世界は今では崩れていたぞ。それなのに、お前たちは俺様に何もないと言うのか?」
これに対して、理子たちははっきりと言い返した。
「ええ、ありませんわね。総統が、お逃げになられた後、いろいろありましたけど、何もしてはくれなかったじゃないですか?」
「そうだよね。総統は自分の得になることしか考えないもん」
「お前らな・・・」
そして、総統が怒った。
「この大陸にある世界の核があれば、地上に大地を戻せるというのに、お前たちはそれを邪魔しようというのか?」
「世界の核、だって?」
優花は、世界の核について心当たりがあった。
「そうだ。世界の核は大地を形成するものだ」
「確かにそうね・・・」
「じゃあ、その世界の核を探せばいいんだね?」
だが、そう簡単にはいかなかった。
「無理ね・・・」
「えー!? なんで?」
「この大陸のどこに世界の核があるのかが分からないわ」
「だから、探せばいいって言ってるじゃない・・・」
「そう簡単に見つからないのが世界の核。あくまでも世界を形成するものであり、どこにあるのかが決まっていないわね・・・」
聞いていた瑞穂は訳が分からなくなっていた。
「つまりは、適当にさまよって探していくしかないってことになるわね・・・」
「そうだ。だが、一ヶ所だけ、どうしても入れない場所があるんだな、これが・・・」
総統はそう言って、遠くに向けて指を差した。
彼が指を差した先には、大きな建物があった。
かすかに見える・・・。どうやら、遠くにあるようだ。
「あそこまで行ったのですか!?」
「ああ。これを使ってな・・・」
彼はそう言って、背中に背負っていた物を指した。
「こんなもので、ここまで来たの?」
優花は驚いた。
「ハッハッハ。貴様らはその飛行機だと目だって飛べないだろ?」
「飛ぼうと思えば飛べるわ。でもね、あたしたちは世界の核を探しに来たわけじゃないのよ」
「・・・そうか。それじゃ、悠々とこの大陸を楽しんでな!」
そう言って、彼は飛び去ろうとした。
だが、去る前にこう言った。
「おっと。探し回るのもいいけど、森ばっかりだから、歩き回るのもいいが、迷うかもな、ハッハッハ・・・!!」
それを聞いた彼女たちは・・・。
「うーん・・・。森は意外に危険だよ?」
「そうね・・・」
「あうー、お腹空いたー! ご飯食べられる所ない?」
「ちょっと・・・、瑞穂ってば・・・」
「森ばっかりといっても、出口ぐらいあるでしょ?」
「そうですね・・・。あえて、わたしが目印を付けておきます。今はとにかく歩くしかないでしょう・・・」
ということで、6人は森の中を進むことにした。

しかし、6人はこの大陸の本当の姿を知らなかった・・・。
しかも、それが大きなことであることも・・・。
第3章 完