世界創世の乱 〜試練への決意〜

空に浮かんでいた大陸から脱出し、三条宮に集まっていた理子たち7人は、世界各地で暴動が起きていることを慌てて駆けつけてきた瑠梨から話を聞いた。
既に大陸は消えたものの、大陸の脅威に怯える人々や大陸創世の失敗によって失望した人々が苦情を言うかのように、宮に押しかけてきていた。
今ではなんとか抑えている状態なのだが、対応がしきれないほどの人数であるために、中では物を徹底的に壊したり、役人を殴ったりしている者まで現れ始めたという。
そんな状況を、今すぐに何とかしなければと理子たちはそれぞれの宮子へと急いで戻った。

***

そして、ベアトリーチェへと戻った理子と瑞穂は、一条宮へ向かう中、荒れた街を見て歩いた。
「酷いわね・・・」
空に浮かぶ大陸を作り出してしまっただけでもこんな風になってしまうとは、と理子は人々の相当な希望があったのだと改めて思わされた。

2人が一条宮付近に着くと、道いっぱいに人々がいた。
「あ、御子様・・・」
その中の一人が理子に気づいた。
彼の言葉で理子に気づいた人々がだんだん彼女に押し寄せてきた。
「何だったのですか、あの大陸は!」
「あ、あの・・・」
「あんなのが、俺たちが望んでいた大陸なのか?」
「そ、それは・・・」
口々に放たれた人々の言葉に、理子は対応し切れなかった。
「あ、あの・・・。質問は順番にお願いします」
理子のお願いを誰も聞く者はいなかった。
それには理子も困ってしまった。
そして、彼女が人々の押しかけに潰されそうになったその時だった。
「あなた方。確かに責める相手は間違っていませんが、私達だってあなた方と同じですわよ?」
瑞穂が理子の前に立ち、人々を止めた。
「瑞穂!? あなた・・・!」
瑞穂はこう言った。
「・・・分かりますよ。だけど、わたしたちはまだやり直せるのです」
よくは分からなかったが、要は間違っていたというわけなのだろうか。
「どういうことだ? やり直せるって、どういうことだよ?」
「わたしたちは、それぞれ自分のことしか考えていなかったのです。それはただ、大陸を創世させようという心しかなかったからなのです」
「大陸創世は大願として掲げていたはずだ。当たり前のことを言うな」
ここで、理子が割り込んだ。
理子は、瑞穂に退くように言った。
「・・・確かに、そうかもしれません。だけど、私たちは実際にあの大陸に行って分かったことがあります」
理子は、空に浮かんでいた大陸のことを話した。
「大陸は、心・・・。唄を用いて願った者が紡ぎし願いそのもの」
「そう・・・。あの大陸は心によって作られたものなのです」
それを聞いた人々の一人は、こう言った。
「なら、あの大陸は唄を用いて願ったものが悪い心だったのでしょうか?」
それに理子が答えた。
「そう・・・だったのでしょうね。でも、今は違います」
「どういうことだ?」
「今その人は『大切なもの』を見つけて、その『大切なもの』が全てを受け止めてくれましたから」
「・・・よく分からないが、もう二度とあんなものはできないんだな?」
理子は頷いてこう言った。
「ええ。・・・でも、わたしたちだけでは進められない計画になってしまったのも事実です」
「え?」
「唄うのは私たち御子なのですが、皆様方にも共に願ってほしいのです」
「俺たちも、願う・・・?」
理子は頷いた。
「そうか・・・」
「私たちは今になって気づいたのです。何故私は皆様方に大陸創世を掲げて呼びかけていたのかを」
「そうだ。大陸創世は、生命の存続のための大願。そして、それは俺たち全員の願いだ」
「そうね。わたしたちも御子様同様、この世界がなくなるのが嫌だったから、大陸創世を望んでいたのよね」
人々は落ち着きを取り戻した。
「御子様、すみませんでした。俺たちは御子様の苦労を知らずに・・・」
「いいのよ。私たちとて、あなた方には苦を強いてきてしまったのですから・・・」
こうして、ベアトリーチェの騒動は収まった。
「(・・・落ち着いたら、他の所にも助けに行かなくては・・・)」
理子はそう思い、冷静に事を収めていったのであった・・・。