世界を賭けて・・・
世界創世の乱によって築かれた絆もあれば、崩れた絆もある。
だが、今のままでは到底ベアルトリスは救える訳がない。
なぜなら、この大陸は絆によって紡がれたものなのだから・・・。
***
二条宮から去った瑠梨は、勢いで出てきたことを今更ながら後悔していた。
「・・・どうしよう。勢いで出てきちゃったけど、行く当てもないなぁ・・・」
彼女は、街道の脇に行った。
そして、そこから下を覗き込んだ。
「やっぱり、この大陸は浮いているんだね・・・」
瑠梨は上を見上げた。
「あぁ・・・。空は、高くて広い・・・。わたしたちは、そんな空にいるんだ・・・」
彼女はそう言うと、その場で仰向けに寝転がった。
そして、大きく伸びをした。
「う〜ん・・・っ! 今日は風が・・・とても冷たく感じるよ・・・」
こんなことをしたって、何の解決にもならない。だけど、自分は間違っていないんだ。
そう、瑠梨は思った。
「ほんと・・・、どうしよう・・・?」
彼女はこれからのことを考えながら、空を見続けた。
***
涼歌を護る。
そう誓った米斗だったが、彼女の過去と心を知っている彼は、今の彼女を許すことができなかった。
なぜなら、今世界では大陸崩壊を恐れている人や涼歌が紡いだ大陸による襲撃で大陸中の人々が宮に押しかけているのに、彼女はそれを気にしていない様子だったからだ。
「(・・・分かっている、誰もが平和であって欲しいことは。だけど、御子は自分だけの御子じゃないんだ)」
米斗は、理子の心配をした。
「理子様なら瑞穂がついているから大丈夫だよな・・・。だけど、ベアトリーチェには俺の家もある・・・」
米斗は、1番エリアから一条宮へと向かうことにした。
1番エリアへの道を歩いていると、仰向けに寝ている瑠梨を見つけた。
彼はすぐに、瑠梨の元に寄った。
「どうしたのですか?」
米斗の声に気がついた瑠梨は、すぐに起き上がってこう言った。
「え・・・? あ、あぁ・・・、何でもないよ」
「瑠梨様らしくもないですね、その言動は・・・」
「そう・・・ね。そうだね・・・」
瑠梨は、米斗から顔を背けた。
「・・・朱禰様は、どうしたのですか?」
一緒にいてもいいはずの朱禰がいないことに気が付いた米斗は、そう言った。
それを聞いた彼女は、こう返した。
「・・・あんな人は、もう知りません!」
「え?」
「あんな人、大嫌いです!」
米斗は、瑠梨からそう言った理由を聞いた。
瑠梨は、朱禰のことを話した。
「・・・と言う訳なの」
瑠梨が話したことは、米斗自身にも似たようなところがいくつかあった。
それは、朱禰と涼歌が望んでいることが同じことであるところ、瑠梨と米斗が今のことを解決しないといけないとダメだと言ったところ・・・。
「はぁ・・・」
米斗は溜め息をついた。
「どうして、溜め息なのよ?」
「まぁ、その・・・、瑠梨が言ったことは正しいよ」
「いや、正しいのに何故溜め息をつかれなければならないの?」
「それは、同じ考えを持っている人がいてよかったって思ったからだな」
元より、米斗たちの考えは正しい。
このままでは大陸創世どころかベアルトリスが落ちて、ベアルトリスに住む人々がみんな死んでしまうのだ。
「・・・ま、どうでもいいんだけど、米斗がいるのなら・・・」
瑠梨は、何かを考え始めた。
「俺が、どうしたって言うんだ?」
「ああ・・・。米斗なら、朱禰様は話を聞いてくれるかなって・・・」
「・・・つまりは、二条宮に一緒に行って欲しい、と?」
瑠梨は頷いた。
「そうだね。お願い、米斗!」
特に行く所がなかった米斗はあまり気が進まなかったが、二条宮行ってみることにした。
「分かった。でも俺、ああいう積極的なお方は、苦手なんだよ・・・」
「そうなの? 驚きだなぁ・・・」
そして米斗は、瑠梨と共に二条宮へと向かったのであった。
***
アルフィンに着いた。
だが、町の人々の視線が冷たく感じた。
米斗は、魔大陸から帰ってきて初めてここで住民を見ることになる。
「アルフィンには、なんとか人がいるんだな・・・」
それを聞いた瑠梨は、フォーレンのことを思い出した。
「うん、まあね・・・。じゃあ、フォーレンには人がいなくなったの?」
「そうだな。元々静かな町から、完全に人がいなくなってしまった・・・」
そうやって二人で話していると、突然町の人が二人に襲い掛かった。
「御子は、さっさと自分たちだけで逃げるんだろう?」
米斗は、それを制止した。
「意味が分からないのだが・・・?」
「そうか、分からないか・・・。ベアルトリスが落ちると騒いで、俺たちの意見も聞かずに勝手に始めている・・・」
「・・・分かった。わたしたちが悪かったから、その思いを共に朱禰様にぶつけに行こう」
だが、彼は断った。
「いい。どうせ、昔みたいな偉い御子様じゃないんだ」
瑠梨も米斗も、何も言い返せなかった。
「・・・分かった。そういうのなら、わたしたちでどれだけやり直せるかを試してみるわ」
そう言って、瑠梨は二条宮へと向かった。
「おい、瑠梨・・・!」
米斗も、瑠梨の後に続いた。
「・・・訳が分からない。結局、俺たちは無視されているじゃないか・・・」
そう言って、男も町の脇へと去って行った。
二条宮に戻ってきた瑠梨は、すぐに朱禰の部屋に向かった。
見張りの兵士がいない。どうやら、朱禰の指示で出払っているようだ。
瑠梨は何も気にせずに、必死に部屋の扉を叩いた。
「朱禰様! 朱禰様ってば!」
部屋からの反応がない。
「・・・」
瑠梨は、遅れてやってきた米斗を睨んだ。
「・・・睨まなくても、やってみるって」
米斗も、部屋の扉越しで朱禰に呼びかけた。
「朱禰様、いるんですよね? 俺が誰だか、あなたになら分かりますよね?」
米斗が呼びかけると、部屋の扉が開いた。
「・・・瑠梨に、米斗ね・・・」
そう言うと朱禰は部屋から出て、二人を居間に案内した。
「話すことがあるんでしょ?」
米斗のおかげなのか、あっけなく部屋から出た朱禰を見た二人は呆然としていた。
「ええ、ありますよ」
瑠梨は、米斗を引っ張って連れて行った。
***
居間の前で朱禰から少し待つように言われた二人は、彼女が来るまでの5分間話すことがなかった。
そして、5分が経った。
「・・・待たせたわね」
朱禰は、いつものトレーナーとジャージから綺麗な着物に着替えていた。
米斗は後ろにあった大きな掛け時計をチラッと見て、心の中で驚いていた。
「5分で、ですか・・・。早いですね」
「ま、まぁ・・・ね。これでも、幼い頃はよく着させられていたのよ」
「そうなんですか・・・」
瑠梨は、自分が話したいことを言い始めた。
「・・・オホン。それで、もう戻ってこないと言ったわたしがどうして戻ってきたか、分かりますか?」
朱禰は頷いた。
「ええ。分かるわよ」
急いで着替えたせいか、朱禰は着物を整えてから座った。
「・・・あたしが御子なのは、押し付けられたからじゃないんだ。責任なんだ・・・」
「責任? 何の責任ですか?」
「当主・・・お父様だけがアルフィンを守っているんじゃない。御子であるあたしもいずれはお父様のように当主になるんだから、それをちゃんとできるかどうかを試されているんだよ」
「宮家・・・王族から託された町を守る責任・・・か」
朱禰は頷いた。
「・・・今まで、お父様はどういう風にアルフィンを守ろうとしていたのかな・・・?」
それを聞いた瑠梨は、自分がどう生きてきたのかを見直した。
「・・・わたしも、どうしてあんなことを言ったのだろうか。家の都合とか、勝手に決め付けているわたしもダメなんですね・・・」
そんな彼女たちに、米斗はこう言った。
「大丈夫ですよ。どういった経緯でも、朱禰様や瑠梨は今までちゃんとやってこられたではありませんか!」
それを聞いた彼女たちは、そうだなと思った。
「・・・そうね。もうここまできてしまうと、どうでもいいわ。これからどうするかは、みんなの理想を遂げてからにしましょうか」
「うん。最初は大陸なんかどうでもいいと思っていたけど、やっぱり無くなっちゃうのは嫌だよね・・・」
そう言うと、朱禰はその場に立って、飾ってあった刀を取りに行った。
「朱禰様?」
朱禰が刀を持つと、刀を鞘から抜いた。
「・・・それ、飾ってあったものですよね?」
「ええ・・・。でも、これから行く所に必要な物よ」
「これから行く所、とは・・・?」
朱禰は、二人について来るように言った。
そして、二人が朱禰の後について行くと、廊下の行き止まりにたどり着いた。
「・・・行き止まり?」
行き止まりに着くと、朱禰は壁を今から持ち出した刀で切った。
すると、頑丈そうに見えた壁がきれいな切れ目を見せた。
「瑠梨と米斗で、横にずらしてくれない?」
二人は言われた通りにした。
すると、下に下りる階段が現れた。
「これって・・・?」
「フフッ。昔、お父様がやっていたことを今やってみたのよ」
米斗と瑠梨は、大丈夫なのかと不安に思った。
だが、朱禰はそんな二人を無視して、さっさと先に進んで行ってしまった。
「あ・・・、え・・・? ちょっと、朱禰様!」
二人はすぐに朱禰の後を追った。
***
階段を下りた先には、まっすぐな通路があった。
その通路を行き止まりまで進むと、祠みたいなのがあった。
そこには、一つの刀が奉られていた。
「あった・・・」
朱禰はそれを手に取った。
「大丈夫なのですか、奉られているものを持ち出そうとしているようなのですが?」
「大丈夫よ。別に呪いとかなんかかかっている訳じゃないから」
そう言うと、朱禰は刀を鞘から抜いた。
刃は、光に当たると新品みたいにまぶしく輝いていた。
「・・・昔の刀ですよね?」
「そうだよ。でも、これが使われることがあった時代なんか、一度もなかったと言われているわ」
「だから、新品同様に見えるのですね・・・」
朱禰は、手に持っている刀について語り始めた。
「この刀は、『火虞耶』という力を必要としているの。その力がないと、この刀を振るう事すら許されないっていうらしいのよ」
「え? それで、朱禰様には『火虞耶』という力があるのですか?」
「10年前までにはあるって言ってくれた人がいたけど・・・?」
「いたけど、ってどういうことですか?」
その質問に、朱禰は曖昧な答えを返した。
「・・・言ってくれた人がいたって言う話らしいけど、あたしにはよく分からないよ」
「はあ・・・」
その時、3人の後ろから、誰かがやってきた。
「誰だ、この祠に勝手に入っているものは?」
「・・・お父様・・・!」
やってきたのは、二条家当主・二条桃香だった。
・・・まぁ、名前が女性っぽいのには突っ込まないでください。気にしない体で行くことにする。
「ふぅ・・・。まさか、ここの秘密を知られていたとはな・・・」
「あ、うん、まぁ・・・」
桃香は、朱禰の持っていた刀を見た。
「・・・その刀、お前には使えるのか?」
「・・・そんなの、分からないわ。でも、10年前わたしには『火虞耶』の力があるって言われていたみたいだし、使えるんじゃないかなって・・・」
それを聞いた桃香は、朱禰に刀を鞘に戻すように言った。
「とりあえず、刀を鞘に納めなさい。むやみに振り回すと近くにいる客人を傷つけることになる」
朱禰は言われた通り、刀を鞘に戻した。
刀を鞘に納めたのを見た彼は、3人に後についてくるように言った。
「刀を持ち出すほどの事態なのだな。ならば、その刀を持ってついてくるといい・・・」
そう言われた3人は、彼の後に続いた。
***
案内されたのは、先ほどの居間だった。
桃香は、3人を指定した場所に座らせた。
朱禰は机に刀を置き、扉を開けた刀を元の場所に戻した。
「・・・何なのですか、一体?」
桃香はこう言い出した。
「・・・100年前からのことだが、今となっては大陸崩壊が間近のようだな?」
「・・・そうですね」
朱禰がそう言うと、桃香はこう言った。
「それが分かっているのに、大陸創世を失敗した後のお前はずっと部屋に閉じこもっていたではないか!」
「・・・」
朱禰は何も言わなかった。
「・・・大陸創世は、御子の力を失った当主にはできないんだ・・・」
「何故ですか?」
桃香は、こう答えた。
「今の当主も、元々は御子の役目をしていた。だが、大人になると力を失うんだ。だから、20歳を目処に御子から当主になるのが決まりなんだ」
「20歳・・・か・・・」
「剣であるわたしや科鈴、楓葉、瑞穂も御子だけど、最初から力はないけどね。もちろん、米斗も同じよ」
「そうだな・・・」
力の影響を受けやすい子供だから、御子の力が使いやすいのだろう。
「それで、だ・・・。確かに、お前にも幼い私にも火虞耶の力はあった」
「それなら、この刀は使えるんじゃないのですか・・・?」
「だが、使って欲しくはないんだ。特に朱禰にはな・・・」
「どうして、わたしは特にだめなんですか!?」
桃香はこう答えた。
「霊力と魔力を行使できないお前は、絶対に力を暴走させる」
「・・・それなら、どうしてわたしに使わせないようにしたのですか?」
「行使できるように訓練しても、お前に秘められた力の大きさは、私たちでは抑えられないであろう・・・」
「そんなの、やってみなきゃ・・・!」
そう言うと、朱禰は刀を抜いた。
「やめろ!」
桃香の声は届かなかった。
「朱禰様!」
危険を察知した米斗と瑠梨は、朱禰を取り押さえようとした。
だが、刀を鞘に戻さなかった。
「朱禰を抑えても無駄だ! 刀を鞘に納めなければ、意味がないぞ!」
桃香が朱禰の持つ刀を鞘に戻そうとしたが、刀に触れることができなかった。
「くっ・・・、力を失った私では無理なのか・・・」
朱禰は押さえていた瑠梨と米斗を振り払った。
「朱禰様・・・!」
瑠梨は再び朱禰に近づこうとするが、朱禰は瑠梨に向かって刀を振り下ろした。
「な・・・っ!」
瑠梨は何とか避けることができた。
「何をするんですか!?」
だが、朱禰には彼女の声は届いていないようだった。
「・・・下がるんだ!」
桃香は、飾ってあった刀を朱禰に向かって振った。
朱禰は桃香の刀を、持っていた刀で切った。
「・・・やはり、無理か・・・」
朱禰は、隙ができている桃香に刀を振り下ろした。
「桃香様、危ない!」
瑠梨はとっさに間に割り込んだ。
「瑠梨・・・!」
米斗は後ろから朱禰に攻撃を仕掛けようとした。
だが、朱禰は瞬時に米斗の方を向いて、米斗を刀で振り払った。
「う・・・っ!」
「米斗!」
瑠梨はすぐさま、相手に攻撃を仕掛けた。
「どうしたんですか、朱禰様!?」
朱禰は、余裕で瑠梨の刀を自分の刀で受け止めた。
「・・・瑠梨。今の朱禰は、おそらく火虞耶に支配されている」
「・・・では、どうすればいいのでしょうか?」
「朱禰を火虞耶の支配から解くしかない。手段は選んでいる暇はない。とりあえずは、朱禰が持っている刀を腰の鞘に納めれば支配は完全に解ける」
「・・・分かりました。やってみます」
瑠梨は、火虞耶に支配された朱禰と戦う覚悟を決めた。
「朱禰様。今、正気に戻してみせます!」
瑠梨は、刀を振りかざした。
「たあっ! ていっ!」
瑠梨は次々に攻撃を繰り出すが、朱禰はそれらを全て刀で受け止めた。
「やあっ! たあっ!」
前方向から繰り出される攻撃に、朱禰は瞬時に対応していた。
「くっ・・・。このままやっても、防御が崩れることはないのね・・・」
瑠梨の動きが止まった時、朱禰は瑠梨に刀を振り下ろした。
「うっ・・・、重い・・・!」
朱禰は、防御がされていない瑠梨の腹を蹴り飛ばした。
「うぐ・・・っ!」
瑠梨は、壁にぶつかった衝撃ですぐに立てなくなっていた。
「……」
朱禰は、そんな彼女に容赦なく刀を振り下ろそうとした。
「やめるんだ、火虞耶!」
桃香は、瑠梨の前に立ちはだかった。
だが、朱禰は彼を斬り捨てた。
「うっ・・・」
「……」
朱禰は桃香を無視して、瑠梨に再び刀を振り下ろそうとした。
だが、瑠梨は壁にぶつかった衝撃から解放されていた。
「いい加減、ワンパターンなのですよ!」
瑠梨は、朱禰の刀を振り払った。
すると、朱禰の刀は朱禰の手から離れて、机に刺さった。
「・・・!」
朱禰はその場に倒れた。
どうやら、意識を失ったようであった。
瑠梨はすかさず朱禰から鞘を取り上げた。
そして、刀を鞘に納めた。
「ふぅ・・・。刀に何故触れたのかが不思議だったけど、これで大丈夫だね」
そう言って、刀を桃香に渡した。
「すまない。やはり、だめだったか・・・」
「う、ううん・・・」
米斗が気が付いて、目を覚ました。
「終わった・・・のか?」
瑠梨は頷いた。
「ええ。この通りにね・・・」
そう言って、桃香に渡した刀を見せた。
「そうか・・・。さすがは二条家の剣だな・・・」
「そう・・・だね・・・」
瑠梨から聞こえたのは、多少不満そうな感じだった。
彼女は、気を失っている朱禰に近寄った。
そして彼女は、朱禰を抱えて居間から出て行った。
「……しばらく、わたしと朱禰様の二人きりにしてください。あと、米斗はわたしに構わなくてもいいからね」
「いや・・・。別に行くところはないな・・・」
「そう・・・。なら、勝手にするといいわ」
朱禰はそう言って、そのまま去って行った。
「私も、ここに居られては困るな・・・」
そう言って、桃香も去って行った。
「はぁ・・・。そうだよな・・・」
そして、米斗はアルフィンを後にしたのであった。
***
米斗は、アルフィンからベアトリーチェへ向かっていた。
だが、彼には何の目的もなかった。
そして、彼が1番エリアを渡ろうとしていた時のことだった。
「ん? 何だ、これは?」
空から紙切れが一枚降ってきた。
米斗は、それを取って読んでみた。
「『誓いの地にて、お前を待つ。』か・・・」
誓いの地には、心当たりがなかった。
「どこだったのだろうか・・・?」
米斗は、誓いの地がどこなのかを思い出そうとした。
「(そういえば、昔にあいつと何かを約束したような気がする・・・)」
――5年前、米斗と皇太子であったフェンディルがある約束を交わした。
それは、共にベアルトリスを崩壊の危機から救い、御子の世界を終わらせることだった。
その約束を絶空の岬でしたというのを思い出した。
「あそこかもな・・・」
米斗は、すぐに絶空の岬へと向かった。
だが、その後を追う誰かがいたことは、彼には分からなかったのであった・・・。